From outside 2009/08

シトロエンC5 HDi written by 笹目二朗

 並の車では物足りないひねくれ者も、業界の異端児たるシトロエンを熟知した玄人も、C5への関心は高い。 その中でも左ハンドル6MTのディーゼルとなると、まず一般の人は見向きもしない。逆に言えば偏差値的に特殊な例として、オーナーは少数派なりの密かな自己満足に浸れる。 また、けして安い買い物ではないし、外見の押し出しからして凡人に見下されるいわれもない。

 少し細かく見ていこう。シトロエンにふんわりとした乗り心地を求める人がいたら、そ れはちょっとお門違い。 ふんわりとは緩やかな上下動を伴う、のどかな動きの表現とも受け取れるが、シトロエンの油圧サスペンションはゆっくりアシを動かすのではなく、縮み方向には素早く追従させ、伸び方向にはゆっくり下ろし、そのバネ下の動きは4輪がそれぞれ独立して動き、路面への追従性が抜群にイイ。 金属バネは縮む時に抵抗となるが、ハイドロはバネが無いに等しくスッと縮む。極端に言えば、ダンパーだけで走っている感覚だ。 じゃあ、バネは何をするかと言えば、縮んだダンパーを元に戻し、車両姿勢を保つためにある。 結果としてボディを常時水平に保つ。 このいわゆるフラット感において、金属バネを持つ車より優れている。

 一般的に大型車は乗り心地がイイと思われているのは、その重さゆえで、水平移動する慣性が大きければ、タイアからの入力があってもボディは動きにくい。 このどっしりと重い重量が効いているのだ。 この重量感覚で言えば、C5は2トン超級に匹敵。 走行感覚は重厚、重い車を実感させる。

 ところが実際には1730kgと、むしろこのクラスの車にしては軽い。 この動力性能的な軽快感に、2・2リッターHDiの173hpが貢献している。 ツインターボのディーゼル・ユニットはPSAフォードとの共作だが、6段マニュアルとの組み合わせではまさに緩急自在。 1750rpm で273Nmを発生し、これはメーター上6速でほぼ100km/hに相当する。 よって同クラスのガソリンエンジンより回転が低く、あきらかに静かでもある。 もちろんディーゼル特有の低回転でのねばりもあり、極端に言えば動いてさえいれば6速ですべて賄えるほどだ。 低速からそのまま踏み込んでも、ターボの特性により負荷が大きいほど過給圧は高まるから、ちょっと待てば必要な加速は得られる。 だから、まるで大排気量AT感覚だ。 しかしそれでは面白くないと思うならば、積極的にギアを選んでやればいい。 2000rpm も回っていればターボ過給も十分な領域にある。 バタフライのないDEゆえに瞬時のレスポンスを味わえる。 仏本国では同じボディに1・6リッターが標準であることを思い出せば、173hpのパワフルな加速がいかほどのものか想像がつくだろう。

 C5HDi を簡潔にまとめれば、乗り心地は重厚にして最高級、動力性能は駿足にして経済的、ハンドリングは直進性抜群にして安定性の高いクルマ、外観のユニークさは中国的なモチーフとあいまって、超個性派ということになる。

 スフィア内のガスとオイルの隔壁の厚さを増すなどして、耐久性をあげたことも安心材料か。 C5はメルセデスと対極にあるクルマだが、体育会系ほど体力に自信のない人や、沈思黙考型の長距離ランナーにオススメ。

これはルボラン09年07月号の記事を元にして 加筆修正を加えたものです。(笹目二朗)

☆C5HDi 22   データ
3サイズ=4779×1860×1451mm
重量=1729kg。(1110 +620)
210km 走行の燃費は14・1km/L
E排気量2179cc、173hp/4000rpm
        273Nm/1750rpm

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